中絶手術の前に「子宮口を広げる処置があります」と説明を受け、何をされるのか不安になる方もいらっしゃるかと思います。この処置で使われることが多いのが「ラミナリア」です。
メトロなど他の処置との違いや、処置中の痛み・過ごし方について、手術前に気になるポイントをお伝えします。
ラミナリアについて
中絶手術の前に「子宮口を広げる処置があります」と説明を受け、何をされるのか不安になる方もいらっしゃるかと思います。この処置で使われることが多いのが「ラミナリア」です。
メトロなど他の処置との違いや、処置中の痛み・過ごし方について、手術前に気になるポイントをお伝えします。
ラミナリアとは、海藻(コンブ科)を原料とした細い棒状の医療器具です。乾燥した状態では直径2〜8mm・長さ6〜8cm程度で、綿棒を細くしたようなイメージに近い形をしています。
子宮頸管(子宮の入り口)に挿入すると、体内の水分を少しずつ吸収して膨張し、子宮口をゆっくりと押し広げていきます。時間をかけて少しずつ開くため、中絶手術の前処置に向いています。
なお、ラミナリア系の器具にはいくつかの製品がありますが、さくま診療所では「ラミケンR」という製品を使用しています。曲げることができるので子宮のカーブに合わせて装着できる仕様のため、一般的なラミナリアに比べて挿入時の痛みがやや少ない点が特徴です。また、短時間でも一定の拡張効果が期待できるため、当院では数十分程度の留置で処置を行っています。
中絶手術では、手術器具を子宮内に挿入するための十分な通り道が必要です。しかし、出産経験のない方や、最後の経腟分娩から10年以上経過している方は、子宮口が固く閉じた状態であることが多く、そのままでは器具を安全に挿入することができません。
そのため、手術の前にラミナリアを使って子宮口を事前に広げておく処置が必要になります。無理に急いで広げようとすると子宮頸管を傷つける(頸管裂傷)リスクがありますが、ラミナリアはゆっくりと時間をかけて開大するため、組織への負担を最小限に抑えることができます。
なお、前処置が必要かどうかは診察時に医師が判断しますので、すべての方に行うわけではありません。
「ラミナリア」と調べると「メトロ」という処置名も目にすることがあります。どちらも子宮に関係する処置ですが、目的も使用場面もまったく異なります。混同されやすいため、ここで整理しておきます。
| 処置名 | 素材 | 目的 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ラミナリア | 海藻製・棒状 | 頸管の開大・軟化 | 水分吸収でゆっくり拡張 |
| ダイラパン | 合成ポリマー・棒状 | 頸管の開大・軟化 | ラミナリアより短時間で拡張 |
| ラミセル | 合成素材・棒状 | 頸管の開大・軟化 | ラミナリアと同系統 |
| ラミケン | 合成素材・棒状 | 頸管の開大・軟化 | 使用前に手で曲げて角度を調整しやすい |
| メトロ (メトロイリンテル) |
シリコン製・風船型 | 子宮収縮の誘発 | 主に中期中絶・分娩誘発で使用。当院では使用しない |
ラミナリアとメトロは、見た目も目的も根本的に異なる別の器具です。
ラミナリアが「子宮口を柔らかく、ゆっくり広げること」を目的としているのに対し、メトロ(メトロイリンテル)はシリコン製の風船のような形をした器具で、子宮内に挿入して膨らませることで「子宮収縮を誘発すること」を目的としています。メトロは主に中期中絶や分娩誘発の場面で使われるため、初期中絶を専門とする当院では使用しません。
ネットで調べると両方の名前が出てくるため「自分はどちらの処置を受けるのか」と不安になる方もいらっしゃいますが、当院で行う前処置はラミナリア系の器具を使った子宮頸管拡張のみです。
ダイラパン・ラミセル・ラミケンはいずれもラミナリアと同じ系統の器具で、水分を吸収して膨張し子宮口を広げるという使い方は同じです。
違いは素材や形状にあります。ラミナリアが海藻由来の天然素材なのに対し、ダイラパン・ラミセル・ラミケンは合成素材でできています。ダイラパンはラミナリアよりやや短時間で拡張が進む傾向があります。またラミケンは使用前に手で曲げて角度を調整しやすい点が特徴です。どの器具を使用するかは医師の判断によります。
実際にどのような手順で処置が行われるのか、流れを順番に説明します。はじめての方でも処置のイメージがつかめるよう、できるだけ具体的に解説します。
まず、腟および子宮腟部を十分に消毒します。その後、必要に応じて局所麻酔や鎮痛剤が処方されます。痛みへの不安がある方は、この段階で遠慮なく担当医に相談してください。
消毒が完了したら、ラミナリア桿(かん)と呼ばれる専用の器具を使い、子宮口をわずかに超える深さまでラミナリアを挿入します。
基本的に1本を挿入します。ただし子宮口の状態によっては、医師の判断で本数が変わる場合があります。
処置後は出血を抑えるため、止血用のガーゼを当てる場合があります。
ラミナリアを挿入した後は、一定時間装着したままの状態になります。
一般的なラミナリアでは数時間程度の留置が望ましいとされていますが、当院では短時間でも一定の拡張効果が期待できる「ラミケンR」を使用しているため、装着時間は数十分程度が目安となります。患者様の負担をできるだけ軽減できるよう配慮しています。
ラミナリアの処置を受けるにあたって、「どのくらい痛いのか」は多くの方が気になるポイントです。結論からお伝えすると、痛みの感じ方には個人差があります。「ほとんど気にならなかった」という方もいれば、「強い痛みだった」という方もいるため、一概に「このくらいの痛みです」とお伝えすることが難しいのが実情です。
それでも事前にある程度のイメージを持っておくことで、当日の不安を和らげることができます。挿入時・装着中・抜去時のそれぞれについて解説します。
なお、当院で使用している「ラミケンR」は、曲げることができるので子宮のカーブに合わせて装着できるため、従来のラミナリアと比較して挿入時の痛みがやや抑えられる傾向があります。とはいえ痛みの感じ方には個人差がありますので、ご不安のある方は遠慮なくお申し出ください。
挿入の際、まず子宮腟部鉗子という器具で子宮の入り口をつまみます。この時点でチクッとした痛みや違和感を覚える方が多いです。
その後ラミナリアを挿入しますが、経験された方の声としては「重い生理痛のような感覚」と表現する方が多く見られます。一方で「思っていたより痛くなかった」という方もいれば、「強い痛みで思わず声が出た」という方もおり、感じ方は人によって大きく異なります。
装着中は、ラミナリアが水分を吸収して少しずつ膨張するにつれ、下腹部に鈍痛や圧迫感が生じることがあります。じわじわと広がっていくような感覚と表現する方が多いですが、こちらも個人差があります。
抜去時はラミナリアが膨張した状態で取り出すため、挿入時より強い痛みや違和感を感じるケースもあります。ただし処置自体はごく短時間で終わりますので、深呼吸をしながら力を抜くことが痛みの軽減につながります。
痛みが心配な方は、処置前に担当医へご相談ください。鎮痛剤の処方や麻酔への対応など、できる限り痛みを和らげる方法を一緒に検討しますので、遠慮なくお申し出ください。「痛みが怖くて相談しにくい」と感じる必要はまったくありません。不安なことはどんな小さなことでも、診察の際にお気軽にご相談ください。
ラミナリアは、中絶手術をより安全・スムーズに行うための前処置のひとつです。子宮口をゆっくりと時間をかけて広げることで、手術時の身体への負担を抑えることができます。
さくま診療所では「ラミケンR」という、短時間での拡張が期待できる製品を使用しており、数十分程度の留置で処置を行っています。患者様の負担をできるだけ軽減できるよう配慮した処置を心がけています。
はじめて中絶手術を受ける方にとって、前処置への不安は当然のことです。わからないことや怖いと感じることは、どんな小さなことでも診察の際にお気軽にご相談ください。