中絶コラム

【医師監修】中絶後の精神不安定はいつまで?ホルモン・心の変化と回復の目安

中絶後、気持ちが不安定になり、涙が止まらなくなったり、理由の分からないイライラに戸惑ったりする方は少なくありません。手術に至るまでの葛藤、終わった後の静けさ、ホルモンの変化、そのどれもが心の揺れにつながりやすい状態をつくり出します。

しかし精神面の反応には個人差があり、「いつまで続くのか分からない」「自分だけがおかしいのでは」と不安になることもあるでしょう。適切な知識をもっておくことで、今の自分に起きていることを理解しやすくなり、必要なケアに気づきやすくなります。

この記事では、中絶後の精神不安定が続く期間の目安、ホルモンや身体の回復との関係、長引く場合の注意点、心を守る対処法、相談先までを整理して解説します。焦らず回復の段階を知りながら、少しずつ心が落ち着いていく道筋を見つけていきましょう。

目次

中絶後の精神不安定はいつまで続く?

不安なイメージ

中絶後の精神状態は、身体の回復と同じように一定の経過をたどることが多いとされています。
短期間で落ち着くケースもあれば、数週間〜数ヶ月と気持ちの揺れが続く人もいます。また、期間だけでなく「どのような気持ちの変化が起こりやすいのか」を理解しておくことで、今の状態を受けとめやすくなるでしょう。

精神面の変化には、ホルモンバランス、睡眠、痛み、周囲との関係性など複数の要因が影響します。そのため「いつまで続くか」を一律には言えませんが、一定の傾向はあります。

ここでは、中絶後の不安定さが続く期間の目安を、代表的な3つのパターンに分けて紹介します。

妊娠の終了後には、急激なホルモン低下によって情緒不安定・涙もろさ・不安の高まりが一時的に起こりやすいことが国際的にも指摘されています。WHOは、妊娠の中断後に起こる心理的反応は「一般的であり異常ではない」と明記しています。

出典:Safe abortion│WHO

中絶後1〜2週間で落ち着く人が多い

比較的多く見られるのは、中絶後1〜2週間ほどで気持ちの揺れが少しずつ落ち着いていくケースです。ホルモン変化による涙もろさや不安感が和らぎ、日常生活での集中力が戻ってきます。

身体の回復が進み、痛みや倦怠感が軽減することも、精神面の安定につながりやすいと考えられています。

この時期に見られやすい反応としては、以下のようなものがあります。

  • 気分が落ち込む日と落ち着いて過ごせる日が交互にある
  • 理由が分からず涙が出ることがある
  • 睡眠リズムが乱れやすい

こうした変化は特別な異常ではなく、心と身体が状況に適応しようとする過程で起きる自然な反応です。無理に元気に振る舞おうとせず、休息を確保しながら過ごすことが回復に役立ちます。

数週間〜数ヶ月続く人もいる

中絶後の気持ちの揺れが、数週間〜数ヶ月続くケースもあります。特に、生活の変化や人間関係の不安、手術前後の緊張が続いていた場合、心の回復により時間がかかることがあります。

この時期に見られやすい反応としては、以下のようなものがあります。

  • 以前より気分の落ち込みが増えた
  • 何をしても楽しさを感じにくい
  • 自責感や不安が長く続く
  • 眠りが浅くなる

中絶という出来事は身体的な経験だけでなく、心理的な経験でもあり、決断に至るまでの背景が複雑なほど心の整理に時間が必要になることがあります。

回復のペースは一人ひとり異なるため、期間の長さだけで判断せず、つらさが強い場合は周囲や専門家に相談することも選択肢に入れてください。

半年以上続く場合はPAS(中絶後症候群)の可能性も

中絶後の不安や自己否定、涙が半年以上続く場合、PAS(Post Abortion Syndrome:中絶後症候群)と呼ばれる状態が関係している可能性があります。

ただし、PASはPASは医学的エビデンスが分かれ、WHOも診断名としては認めておらず、「長期的な心の負担を説明する概念」として用いられることが多い点に注意が必要です。

PASが疑われる場合の特徴としては、以下が挙げられます。

  • 妊娠や中絶に関する記憶が突然よみがえる
  • 強い自責感や無価値感が続く
  • 睡眠障害、食欲低下、集中困難が慢性的になる

こうした状態が続く場合は、セルフチェックで状況を把握しつつ、メンタル専門医やカウンセラーへ相談することが望まれます。早い段階で支援につながることが、心の負担を軽減する助けになります。

PAS(中絶後症候群)は国際的な正式診断名ではありませんが、米国心理学会(APA)は「中絶後に長期的な心理的ストレスが続くことはあるが、個人差が大きい」と述べています。長引く症状は専門的支援が有効とされています。

出典:Abortion│APA

PAS(中絶後症候群)のセルフチェックリスト

PAS(中絶後症候群)は、国際的に統一された医学的診断名ではありませんが、中絶後の心理的負担が長く続く状態を説明する概念として使われることがあります。不安や落ち込みが続くとき、自分の状態を把握する手がかりとして参考になります。

以下のセルフチェックリストに当てはまる項目が多いほど、PASの症状が強い疑いがあります。

□ 妊娠・中絶に関する記憶や感情が突然よみがえる

□ 罪悪感・自責感が続き、気持ちが重く感じる

□ 涙が止まらなくなる、感情が制御しにくいことがある

□ 眠れない、または過度に眠ってしまう日がある

□ 食欲が大きく変化し、食べられない/食べ過ぎてしまう

□ 周囲との会話や交流を避けたくなる

□ 将来のことを考えるのが怖い、意欲がわかない

□ 同じ出来事を何度も思い返してしまう

PAS(中絶後症候群)のセルフチェックリストは自己診断を目的とするものではなく、心の状態を振り返るための目安です。いずれかが長く続く場合や生活に支障が出ていると感じるときには、早めに医師やカウンセラーへ相談することで心の負担を和らげられる可能性があります。

中絶後に精神不安定が起こりやすい医学的な要因

イライラ・不安

中絶後に気持ちが揺れやすくなる背景には、身体の回復だけでは説明できない医学的な要因がかかわることがあります。
特に、妊娠に伴って変化していたホルモンバランスが短期間で大きく変動することで、涙もろさや不安、イライラが生じやすくなるといわれています。
また、子宮の回復にともなう痛みや違和感、倦怠感や睡眠の乱れなど、身体の不調が気持ちの落ち込みにつながる場合もあります。

ここでは、中絶後に心が不安定になりやすい要因を4つの側面から整理し、身体と心がどのように影響し合うのかを確認していきましょう。

ホルモンの急変が涙・不安・イライラを引き起こす

妊娠中はエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンが増え、身体と心の状態を支えています。中絶後はこれらのホルモンが短期間で大きく低下するため、情緒が揺れやすくなることがあります。

涙が突然あふれたり、理由の分からない不安やイライラを感じたりするのは、この変化が影響している可能性があります。

ホルモンの変動は、脳内の神経伝達物質にも影響を与えると考えられており、気分の不安定さや眠りの浅さにつながることがあります。この時期は無理に気持ちを切り替えようとせず、ゆっくり休むことが大事でsy。

感情が大きく揺れる自分を責める必要はありません。体内で起きている変化を理解することで、「なぜこう感じるのか」を受けとめやすくなり、不安の軽減につながる場合があります。

身体の痛みや倦怠感がメンタルの落ち込みを招く

中絶後は、子宮の収縮や下腹部の痛み、出血、だるさを感じることがあります。こうした身体の不調が続くと、家事や仕事が思うように進まないことが増え、それが焦りや落ち込みにつながる場合があります。

痛みや倦怠感は睡眠の質にも影響しやすく、浅い眠りや途中で目が覚める状態が続くことがあります。睡眠不足は感情のゆらぎを強めることが知られており、涙もろさや不安感に拍車をかけることも。

「休んでいるだけなのに気持ちが沈む」「いつもなら気にならないことがつらく感じる」といった状態が起きても、それは心が弱いからではありません。身体の負荷が心にも影響していると理解し、可能であれば負担の少ない生活に切り替えることが大切です。

手術後のホルモン変化が精神面に影響しやすくなる

中絶は身体に直接的な医療介入が行われるため、体内で急激な変化が起こりやすく、回復過程で情緒が揺れやすくなる人もいます。手術後のホルモン変化によって自律神経が乱れ、気分が安定しにくくなります。

突然不安が押し寄せたり、涙が止まらない日が続いたりすることもありますが、これらは身体が回復しようとする過程の一部と考えられています。

また、手術に対する緊張や恐怖が残り、思い出したくない記憶として心に負担を残す場合があります。こうした状態に気づいたときは、感情を抑え込むよりも、信頼できる相手に話すことが回復につながるでしょう。

子宮の回復途中の痛みや違和感が不安を強める

中絶後は、子宮が元の状態に戻るまで時間がかかります。子宮の収縮にともなう痛みや違和感、出血が続くと、「この状態は普通なのか」「自分は大丈夫なのか」と不安が強まることがあります。

こうした心配が積み重なると、気持ちが落ち着かなくなり、眠りに影響したり情緒が不安定になったりすることがあります。痛みや違和感が長く続く場合には、無理をせず医療機関に相談することが安心につながります。

身体の回復は人によって大きく異なるため、周囲と比べる必要はありません。自分のペースで回復していくこと、必要なときに助けを求めることが大切です。

中絶後に罪悪感や不安が強まりやすい心理的・環境的要因

中絶後の精神的な揺れは、身体の変化だけでなく、心理的・環境的な負担が影響することがあります。妊娠や中絶に対して抱いていた思い、周囲の理解や支えの有無、パートナーとの関係など、複数の要素が重なることで罪悪感や強い不安につながります。

中絶という決断に至るまでには、さまざまな事情や背景があることが多く、誰もが同じ経過をたどるわけではありません。

ここでは、気持ちが不安定になりやすい主な要因を3つ取り上げ、心の動きを整理しながら見ていきます。

罪悪感・喪失感が強まりやすい心理反応が起こる

中絶後、ふとした瞬間に自分を責める気持ちが強まり、胸の奥が苦しくなることがあります。「あのとき別の選択ができたのではないか」「自分は間違ってしまったのではないか」という思いが浮かび、頭の中で何度も同じ場面を思い返してしまうことも。

このような揺れは、出来事を受け止めようとする過程で生じる自然な心の反応と考えられます。喪失感や空虚さが波のように押し寄せる日があっても、それだけで異常と判断する必要はありません。

もし言葉にしづらい苦しさが続くときは、信頼できる相手や専門機関に気持ちを預けることも選択肢に入れて構いません。一人で抱え込まなくてよい状態を作ることが、心の回復を進める手助けになります。

相談相手がいないとストレスが悪化しやすい

気持ちを打ち明けられる相手が身近にいないと、心の負担が強くなりやすくなります。「理解してもらえないのでは」という不安から、誰にも話さないまま日々が過ぎると、考えや感情が心の中に留まり、出口を失うことも。

もっとも、中絶という経験は非常に個人的で、言葉にすることが難しい場合もあるでしょう。話そうとしても、適切な言葉が見つからないこともあります。だからこそ、無理に整理しようとせず、「今は話せない自分」をそのまま認めることも大切です。

家族や友人に伝えるのが難しい場合、医療機関や相談窓口、オンラインでのカウンセリングなど、相手を選びながら心を置ける場所を探すことが、孤立を防ぎ回復の助けになります。

パートナーと関係が悪化して別れる

中絶という経験をきっかけに、パートナーとの距離が以前より遠く感じられることがあります。決断に至るまでの思いや事情がすれ違っていた場合、その差が後になって心に影を落とし、会話の温度が少しずつ変わっていきます。

以前のように自然に話せず、沈黙の時間が長くなることで、互いにどう接すればよいのかわからなくなる瞬間もあるかもしれません。

そうした積み重ねの先で、関係を続けるか、それとも一度距離を置くべきか悩む人もいます。別れを選ぶことは、失敗や後悔だけを意味するわけではありません。自分の心を守るための選択である場合もあります。

必要であれば、第三者や専門家の助けを借りながら、自分にとって安全な関係の形を探してみましょう。

精神不安定が長引くときに注意すべき兆候

中絶後の気持ちの揺れが長く続く場合、日常生活に負担が生じることがあります。精神面の反応は個人差が大きく、回復のペースを比較する必要はありませんが、心の負担が強まり、生活への影響が大きくなる前に気づいておくことは大切です。

ここでは、注意したいサインとして現れやすい状態を4つ取り上げます。自分に当てはまるものがあるかどうかを確認しながら、必要に応じてサポートを検討するための目安としてください。

不眠・食欲低下など生活に支障が出る

眠れない状態が続いたり、逆に過度に眠ってしまったりするなど、睡眠のリズムが乱れることがあります。食欲が大きく落ち込んだり、これまでより食べ過ぎてしまったりと、食事のバランスが崩れることもあります。こうした変化は、体力や集中力に影響し、日常の行動が思うように進まなくなる一因となります。

気持ちの揺れと身体の調子は密接に関係しています。眠りが浅い状態が続くと、感情が不安定になりやすく、涙が出やすくなったり、小さなことが気になりすぎたりすることがあります。普段なら落ち着いて対応できる状況にも疲れを感じやすくなることがあります。

休息をとることが難しい場合や、生活機能が大きく低下していると感じるときは、早めの相談が役立ちます。生活の立て直しには、医療機関や支援制度の利用が選択肢になることもあります。

強い自己否定や罪悪感が続く

中絶後、眠りが浅くなったり、逆に長く眠り続けてしまったりする場合があります。心と身体は強く結びついており、休息がとれない日が続くと些細な刺激に敏感になって、普段なら気に留めない出来事でも重く感じられることがあるでしょう。

「なぜこんなにうまくいかないのだろう」と自分を責めてしまう人もいますが、回復の途中で一時的に生活機能が落ちるのはめずらしいことではありません。つらさが長く続くときは、医療機関や相談窓口を頼り、心と身体のバランスを取り戻す方法を一緒に探していくことが回復につながります。

フラッシュバックが起きる

何かの拍子に手術や妊娠にまつわる記憶が突然よみがえり、胸の苦しさや動悸を感じることがあります。過去の出来事に対する心の整理が追いつかないとき、このような反応が起こりやすくなると考えられます。

フラッシュバックは、自分の意思や考えとは関係なく、心と身体が反応してしまうため、コントロールしづらいもの。そのため、「なぜこんな気持ちになるのか」と戸惑うことがありますが、反応そのものを責める必要はありません。

心の負担が強いときは、刺激を避けながら過ごしたり、信頼できる相談窓口につながることが助けになります。

強い症状が続くと日常生活に影響が出やすい

不眠や罪悪感、フラッシュバックといった状態が積み重なると、学業や仕事、家庭生活への影響が大きくなります。感情の揺れが激しく、自分でもコントロールしづらいと感じることがあり、社会とのつながりが負担に変わってしまうこともあります。

中絶後の心の反応は個人差が大きく、短期間で安定する人もいれば、時間をかけて回復する人もいます。どちらが正しいということはありません。ただ、生活に支障が出ていると感じるときや、つらさが続くときには、状況をそのままにせず、必要な支援につながることが大切です。

気持ちを言葉にすることが難しいときは、メモや日記という形で自分の状態を残しておくことで、相談の場で説明しやすくなるでしょう。

中絶後の精神不安定を和らげる方法

気持ちが大きく揺れる時期は、つらさの理由がはっきりと言葉にならないことがあります。無理に元気になろうとせずに、心と身体の負担を少しずつほどいていきましょう。

中絶という出来事を経た心は、緊張でこわばった状態になりやすく、眠りや食事のリズムが乱れたり、感情の整理が難しく感じられたりすることがあります。ここでは、毎日の過ごし方を立て直すための方法に触れ、心が落ち着きを取り戻すきっかけを探していきます。

睡眠・食事・軽い運動で心が安定しやすくなる

感情が不安定な時期は、睡眠と食事のバランスが崩れやすくなります。眠りが浅くなる日が続くと涙が出やすくなったり、思考が悲観的になったりする場合があります。
食欲がわかない日があっても、温かいスープや飲みやすいものを少量ずつとるなど、身体の負担を和らげることが回復の支えになります。

気力が戻らないときは、深い呼吸をしながらゆっくり歩く、軽く身体を伸ばすといった短い運動が役立つでしょう。心拍が整い始めると、胸の張り詰めた感覚がやわらぐことがあります。大きな変化を目指す必要はなく、生活の土台を少しずつ整え直すイメージで構いません。

「休むことに罪悪感がある」と感じる人もいますが、回復のための休息は後戻りではありません。心と身体はつながっているため、基本的な生活を整えることは心理的負担を軽くする第一歩になります。

深呼吸・日記などで感情が整理される

言葉にならない不安や後悔が胸の奥に滞り、心の中で渦を巻くことがあります。そういったときは、深く呼吸する時間をつくると身体の緊張がほぐれ、感情が少しずつ落ち着きます。
感情を抱え続けるのがつらいと感じたときは、短い言葉で日記に残しても構いません。「今日は落ち着かない気持ちだった」「胸が重く感じた」など、一文だけでも十分です。言葉として外に出すことで、自分が何に苦しんでいるのかが見えやすくなり、心の混乱が少しずつ解けていく場合があります。

人に話すことで孤立が解消され精神負担が軽くなる

気持ちを誰にも伝えられないまま時間が過ぎると、孤立感が深まり、つらさが増すことがあります。「理解してもらえないのでは」と不安になることもありますが、適切な相手に話すことで心の重さが少し軽くなります。

家族やパートナーに話すことが難しいと感じる場合でも、医療機関や相談窓口、カウンセラー、匿名のオンライン相談など、気持ちを置ける場所は複数存在します。対話を通じて、自分の感情の輪郭が見えることもあり、考えが堂々巡りから抜け出しやすくなります。

話すことは問題解決を急ぐためではありません。「ひとりで抱えなくていい」と感じられることが心の回復につながります。安心できる場を選び、必要に応じて助けを借りましょう。

周囲や専門家への相談が回復を早める

中絶後の精神的な揺れは、一人で抱え込むほど重く感じられやすくなります。そういったとき、身近な人や専門家の支えを得ながら回復に向かうことは、自分を守るための選択です。

ここでは、心の負担を軽くするために頼れる相手として、パートナー・家族などの身近な存在と、カウンセリングなど専門的な支援について触れていきます。状況に合わせて助けを借りることで、回復の速度が変わることもあります。

パートナー・家族に話すことで心の負担が軽くなる

ひとりで気持ちを抱え続けると思考が同じ場所を回り、息苦しさが強くなることがあります。そうしたときは言葉として外へ出してみることで、胸の奥で固まっていた感情が少しほどけ、自分のつらさの輪郭が見えはじめることもあるでしょう。

パートナーや家族との対話は、問題をすぐに解決するためだけのものではありません。「ひとりで抱えなくてもいい」と感じられる瞬間が、回復の土台になることがあります。

また、パートナーや家族と距離を感じる場合、第三者を交えた対話のほうが安心できることもあるでしょう。自分の心が無理をしない範囲で、届きやすい距離から始めてください。

専門カウンセリングが症状の長期化を防ぐ

つらさが長引くと感じるときや、感情が整理できない状態が続くときは、専門家によるカウンセリングが役立つことがあります。安心して言葉を置ける場所があることで、罪悪感や不安を一気に手放すのではなく、少しずつ軽くしていくことが可能です。

カウンセラーや心理職は、医療機関、自治体の相談窓口、民間カウンセリング、オンラインでの支援など、さまざまな形でアクセスできます。話す内容がまとまっていなくても問題ありません。断片的な感情の言葉から、状況を理解する手がかりを一緒に探していくことができます。

つらさを抱えた期間が長くなるほど、回復に時間がかかりやすくなる場合があります。早めに支援を受けることは、心の負担をこれ以上大きくしないための一歩になります。

中絶後の妊娠リスクと避妊の重要性

術後の身体は排卵が比較的早い段階で再開することがあり、意図しない妊娠につながるケースも少なくありません。避妊を整えないまま性交渉を再開すると、心の準備が整わない状態で再び妊娠に向き合うことになり、精神的な負担が大きくなることがあります。

ここでは、排卵の再開時期と、次の妊娠を考えるうえで大切な視点を確認していきます。

中絶後は約2〜3週間で排卵が戻る人が多い

中絶後の身体は、比較的早いタイミングで排卵が再開することがあります。多くの場合は術後2〜3週間ほどで排卵が戻るとされ、月経の再開を待たずに妊娠する可能性が生じることもあります。

「生理が来ていないから妊娠しないだろう」と考えたまま避妊をしないで性交渉を再開すると、意図しない再妊娠につながるので注意してください。心の整理が追いついていない時期に再度大きな決断を迫られてしまうことがあります。

身体的な回復は個人差が大きく、排卵や生理が戻るまでの期間にも幅があります。そのため、避妊の方法について医療機関で相談し、自分の状況に合った手段を準備しておくことが大切です。

心身が整ってから次の妊娠を考えるのが安全

中絶直後の心身は、ホルモンの揺れや体力の低下など変化が大きい時期です。気持ちの整理が追いつかないまま次の妊娠と向き合おうとすると、判断が急ぎすぎになり、負担を強く感じることがあります。

次の妊娠を考える場合は、身体の回復だけでなく、心の状態にも目を向けましょう。医師やカウンセラーへ相談しながら、無理のないペースで準備を進めていくほうが安全です。

避妊について話し合えるパートナーや相談先があることは、心を守る助けになります。焦らず、安心できるタイミングを選んでください。

中絶後の精神的安定に関するよくある質問

中絶後、気持ちが大きく揺れる時期を過ごす人は少なくありません。涙が出やすくなったり、落ち込みが続いたり、ふとした瞬間に不安が込み上げることもあります。その反応は、特別な弱さを示すものではなく、身体や心が変化に対応しようとしている過程ととらえましょう。

ここでは、中絶後によく寄せられる質問を取り上げながら、気持ちの揺れがどう続くのか、どのように向き合えるのかを確認していきます。

中絶後に情緒不安定になるのは普通ですか?

中絶のあと、涙がこぼれやすくなったり、気分が急に沈み込んだり、感情が揺れやすくなる人は多くいます。その変化は、決して珍しいものではありません。

無理に前向きな言葉で押し込めようとすると、かえって苦しさが増すこともあるため、感じている気持ちに名前をつけるように、少しずつ言葉にしていくことが大切。

つらさが強く長い期間続く場合や、睡眠・食事が取れないほどの状態が続くときには、早めに相談できる場所につながることが大切です。

絶後の精神不安定はどれくらい続きますか?

期間には大きな個人差があり、数日〜1、2週間ほどで落ち着く人もいれば、1〜2か月ほど気持ちが揺れやすい状態が続く場合もあります。

回復のペースは、体調、環境、支えてくれる人の有無によって変わるので、他の人と比べて回復が遅いと感じても自分を責める必要はありません。

ただし、日常生活に支障が出るほどの落ち込みや不安が続くときは、医療機関や相談窓口への相談がおすすめです。

中絶後でもすぐに妊娠する可能性はありますか?

生理が戻る前に排卵が起こることがあり、術後約2〜3週間で妊娠する可能性もあります。「生理が来ていないから大丈夫」と考えて避妊をしないと、意図しない妊娠につながるので注意してください。

再び大きな決断を迫られないためにも避妊について医療機関で相談し、自分に合う方法を整えておくと安心です。

中絶後に生理が遅れることはありますか?

ホルモンバランスが整うまでに時間がかかることがあり、1〜2か月ほど生理が戻らない人もいます。

ただし、生理の遅れがすべてホルモンの影響とは限りません。排卵が先に再開して妊娠している可能性が残るため、必要に応じて妊娠検査薬を利用したり、医療機関で確認したりすると安心につながります。

「様子を見る」期間を長くしすぎず、体調の変化に気づいた時点で相談できる場所を確保しておくことが心を守る手段になります。

精神的に不安定なときはクリニックに相談できますか?

中絶を行った医療機関や産婦人科では、心の相談に対応していることがあります。医療機関のほかにも、自治体の相談窓口、カウンセリング、民間の支援サービス、匿名で話せるオンライン相談など複数の選択肢があります。

言葉がまとまっていない状態でも相談して構いません。断片的な感情を少しずつ共有することで、何に苦しさがあるのかが見えやすくなり、気持ちの負担が和らぐ場合があります。

ひとりで抱え続けるほど、回復に時間がかかる可能性もあるため、限界を感じる前に支援へつながることが大切です。

中絶後の精神的つらさはどのタイミングで診察すべきですか?

眠れない日が続く、食欲が落ちて生活がうまく回らない、強い自己否定や罪悪感から抜け出せないなどの状態が続くときは、早めに受診を検討してください。

「このままひとりで支えるのは難しい」と感じた時点で相談して構いません。支援につながったからといって、気持ちがすぐに軽くなるとは限りませんが、回復へ向かう足場が整い、心が息をつける時間が生まれる場合があります。

診察は恥ずかしいことではなく、自分を守るための行動です。つらさの形がはっきりしなくても、早めに助けを求めてください。

まとめ:中絶後の精神不安定には適切なケアを

中絶のあと、心が不安定になることはめずらしいことではありません。気分の揺れや涙、眠りにくさ、食欲の変化があらわれる場合があり、これらは身体と心が大きな変化に対応しようとする過程と考えられます。

つらさが続くときは、信頼できる相手や医療機関、相談窓口につながることで、負担が軽くなる場合があります。身体の回復と同じように、心にも休息や支えが必要です。

必要であれば、カウンセリングや支援サービスを利用しながら自分のペースで整えていく方法を検討してください。ひとりで抱え込む必要はないので、安全な場所と人に支えられながら、少しずつ回復へ向かっていきましょう。

監修医情報

理事長・院長

佐久間 航 医師

佐久間 航
略歴
平成12年 大阪医科大学医学部 卒業
平成18年 医療法人 大生會 さくま診療所 開院
所属・資格
  • 医学博士
  • 産婦人科専門医
  • 母体保護法指定医
  • 日本東洋医学会 漢方専門医
所属学会
  • 日本更年期学会 会員
  • 日本心身医学会 会員
  • 日本周産期新生児学会 会員