中絶コラム

帝王切開の経験がある人でも中絶できる?リスクと注意点を医師が解説

帝王切開で出産した経験がある人の中には、思いがけない妊娠や、さまざまな事情から中絶を考える場合があります。

子宮には手術の瘢痕(傷跡)が残るため、回復が十分でない場合や帝王切開をくり返している場合、処置による刺激で出血が強くなることや、内部で炎症が広がるおそれもあるでしょう。

この記事では、帝王切開経験者が中絶を受ける際に知っておきたいリスクや、初期・中期中絶の違い、中絶前の検査、術後の回復のポイントについて順を追って整理します。

心身への負担を少しでも減らすために、まずは正しい知識から確認していきましょう。

目次

帝王切開経験者が中絶をするリスク

帝王切開の傷跡が残っている子宮は、手術の刺激に弱くなることがあります。回復が十分でない瘢痕は裂けやすく、また手術を重ねた人では子宮の内部が癒着して器具が進みにくい場合もあります。

さらに、瘢痕そのものに受精卵が着床する特殊な妊娠が起こることもあり、妊娠の週数によっては手術の方法が限られることがあります。

どのリスクが自分に当てはまるのかを知ることで、より安全に手術を受ける選択肢を考えやすくなります。ここでは、子宮の状態や妊娠経過によって起こりやすいポイントを、順番に確認していきましょう。

海外のレビュー研究では、帝王切開既往の女性における中絶で、子宮破裂・大量出血など瘢痕部関連の合併症が報告されており、術前評価の重要性が強調されています。

出典:Australian and New Zealand Journal of Obstetrics and Gynaecology(Wiley)

瘢痕の状態(菲薄化・不完全治癒)があるとリスクが上がる

帝王切開でできた瘢痕は時間の経過とともに回復しますが、それには個人差があります。

瘢痕が薄く弱い状態を「菲薄化」と呼び、処置の圧力に耐えにくく、裂けやすいことが問題になります。わずかな力でも子宮壁が損傷し、強い出血につながるおそれがあるため、慎重な判断が欠かせません。

また、瘢痕が内部で完全に閉じ切らず、治りきっていない「不完全治癒」のケースでは、細菌が侵入しやすく、子宮内の炎症や感染症が起こることがあります。発熱、下腹部の痛み、悪臭のあるおりものが続く場合には、早めの受診が必要です。

帝王切開瘢痕部の菲薄化や不完全治癒は、CSP(瘢痕部妊娠)など重篤な合併症に関与する可能性があると報告されています。

出典:PubMed(Journal of Minimally Invasive Gynecology)

帝王切開回数が増えると妊娠中の子宮合併症リスクが高まる

帝王切開をくり返すと切開部への負担が積み重なり、周囲の組織が弱くなることがあります。中絶では器具を子宮内へ挿入するため、瘢痕が薄い人では子宮破裂や大量出血につながる危険が高まります。

また、手術を重ねるほど瘢痕組織が増え、子宮内が癒着するケースも。癒着が強いと器具が通りにくく、妊娠組織を取り除く操作に時間がかかることがあります。

そのため、帝王切開回数が多い人ほど早い時期に受診することが重要です。妊娠週数が進んでから相談を始めると、母体への負担が大きくなることもあるため、中絶を検討する段階で医師へ相談し、適切な方法と時期を一緒に検討してください。

中期中絶の大規模データでは、帝王切開歴のある女性は子宮破裂や輸血を要するリスクが上昇すると示されています。

出典:American Journal of Obstetrics & Gynecology(ScienceDirect)

子宮の癒着や変形があると中絶時の合併症リスクが高い

帝王切開を受けたあと、子宮内部で瘢痕組織が広がり、周囲の組織と癒着することがあります。癒着は子宮の動きを制限したり、内部の形を変化させたりすることがあり、中絶時の操作を難しくする原因のひとつです。

癒着が強い場合、子宮内に器具が通りにくくなり、妊娠組織を取り除く手技に時間がかかることがあります。処置中の摩擦や圧力が瘢痕部に加わると、子宮壁が損傷しやすくなり、出血が増えるおそれもあります。

癒着や変形の有無は自分で判断できません。医師は超音波検査や子宮の動きの確認を行い、安全な手術方法を検討します。違和感があったり、過去の手術で癒着を指摘されたことがある人は、事前に必ず伝えてください。

瘢痕部妊娠(CSP)は子宮破裂の危険性が高い

帝王切開の傷跡となった部分に受精卵が着床してしまう状態を「瘢痕部妊娠(CSP)」といいます。通常とは異なる位置に妊娠が進むため、胎嚢が成長するにつれて瘢痕部分が圧迫され、子宮が裂ける危険が高まります。

瘢痕部妊娠では大量出血や子宮破裂につながるおそれがあり、緊急の対応が必要になるケースもあります。診断が遅れると、母体への負担が大きくなるだけでなく、子宮を温存できない可能性も否定できません。

超音波検査で早期に発見できることがあるため、帝王切開の経験がある人が妊娠に気づいたときは、できるだけ早く医療機関で確認することが大切です。出血や下腹部の張りが続く場合は、迷わず受診してください。

妊娠週数が進むほど手術難易度と母体リスクが上がる

中絶手術では、妊娠週数によって処置方法が大きく変わります。初期の段階であれば子宮への負担が比較的少ない方法を選べる場合がありますが、週数が進むほど手術の難易度は上がり、帝王切開経験者では特に慎重な対応が求められます。

週数が進むと胎嚢や胎児の大きさが増し、処置に必要な操作範囲が広がります。子宮の収縮も強くなるため、瘢痕部分に負荷がかかりやすく、出血や子宮損傷のリスクが高まります。

そのため、帝王切開の経験がある場合、中絶を検討している段階でできるだけ早く医療機関へ相談する方が安心です。週数が進んでから初めて相談した場合、手術方法の選択肢が限られたり、対応可能な医療機関が少なくなることがあります。

妊娠週数が進むほど中絶手技に伴う合併症率が上昇することが示されており、帝王切開既往者ではより慎重な管理が必要とされています。

出典:PubMed(Prenatal Diagnosis)

帝王切開経験者を受け入れられるのは高度医療機関に限定されることがある

帝王切開の経験がある人の中絶では、子宮の瘢痕や癒着、瘢痕部妊娠(CSP)などへの対応が求められる場合があります。そのため、すべての医療機関で安全に受けられるわけではなく、受け入れが可能な施設が限られるケースがあります。

設備が整っていない医療機関では、急な出血や子宮損傷への対応が難しくなることがあるため、緊急時に輸血や開腹対応ができる高度医療機関が推奨されるケースも。予約時の段階で、帝王切開歴があることを必ず伝えてください。

受診前に、対応可能な医療機関かどうかを確認しておくと、手術方法や日程が決まりやすくなります。

初期中絶と中期中絶で異なる手術方法と注意点

中絶手術は、妊娠週数によって方法や体への負担が大きく変わります。

妊娠が早い段階であれば、子宮にかかる刺激を抑えた方法を選べる場合が多く、帝王切開の経験がある人でも安全に進めやすい傾向があります。一方、週数が進むと胎児や胎嚢が大きくなるため、処置に必要な手順が増え、瘢痕部分にかかる負荷も強くなります。

初期と中期では注意すべき点が異なるため、それぞれの特徴を理解しておくことが、体への負担を減らす判断材料になります。

ここからは、初期中絶(〜11週)と中期中絶(12〜21週)の違いと注意点を順に整理します。

初期中絶(〜11週)の注意点

初期中絶では胎嚢が比較的小さく、処置が短時間で終わることがあります。しかし、帝王切開の瘢痕が残る子宮に器具を入れる以上、完全に負担がないわけではありません。術前のエコー確認と、医師が安全に操作できる環境が必要。

初期中絶には主に「吸引法」と「掻爬法(そうはほう)」があります。吸引法は子宮への刺激を少なく抑えられるのに対し、掻爬法は子宮壁を傷つける恐れがあり、帝王切開経験者では慎重な選択が求められます。

それぞれの特徴と注意点を見ていきましょう。

吸引法は子宮への負担が少なく安全性が高い

吸引法は、細い器具で子宮内部を吸引する方法で、多くの国で推奨されている中絶手技です。子宮内膜を削る動きが少ないため、瘢痕部分への刺激を抑えやすく、菲薄化が疑われる人でも比較的安全に行える場合があります。

術後の出血が少なく、感染のリスクが低いとされる点もメリット。ただし、医師の技量や設備に左右されるため、吸引法に対応した医療機関であるか事前に確認してください。

掻爬法は子宮壁損傷リスクがあり注意が必要

掻爬法は子宮内膜をかき取る器具を使う方法で、子宮の状態によっては必要になる場合があります。しかし、瘢痕が弱い人では、処置による圧力が菲薄化部分にかかり、損傷や強い出血につながる恐れがあります。

帝王切開経験者で掻爬法を選択する際は、瘢痕の厚みや癒着の有無を事前に確認し、必要に応じて吸引法と組み合わせる判断が重要です。術後に腹痛や悪臭のある出血が続くときは、早めに受診してください。

中期中絶(12〜21週)の注意点

中期中絶では胎児や胎嚢が大きくなり、子宮収縮を促して妊娠組織を排出していく方法が一般的です。処置に時間がかかることがあり、瘢痕部分に強い負荷がかかるため、帝王切開経験者では慎重な管理が求められます。

中期中絶は、緊急出血への対応や麻酔管理、輸血体制が必要になる場合があり、すべての医療機関で対応できるわけではありません。早期に相談し、対応可能な施設の確認をすることが重要です。

中期中絶での子宮収縮は合併症リスクが増える可能性がある

中期中絶では子宮収縮が強まるため、瘢痕部分に圧力が集中し、子宮破裂や大量出血につながる可能性があります。帝王切開の回数が多い人や、瘢痕の菲薄化が疑われる人では、特に丁寧な経過観察が必要です。

陣痛に似た痛みが続くことがあるため、痛みの緩和や麻酔の調整が行われる場合もあります。強い痛みやめまい、ふらつきが出た際には無理をせず、すぐ医療スタッフへ伝えてください。

初診が遅れると手術方法が制限される

中期に入ってから初めて受診すると、選択できる処置方法が限られることがあります。対応できる医療機関も少なくなり、手術日程の調整が難しくなる場合もあるでしょう。

中絶を検討している段階で早めに相談することで、体の状態に合わせた方法を選べる可能性が高まります。訪れる医療機関に迷う場合、紹介状の利用や電話相談も活用するのがおすすめです。

中絶前に必要な検査と手術の準備

帝王切開の経験がある人では、手術前に子宮の状態や全身の健康を丁寧に確認しておくことが欠かせません。瘢痕の回復具合だけでなく、妊娠している位置、麻酔に耐えられる体調かどうか、そして緊急時に備えられる医療体制が整っているかなど、いくつかの視点から準備を進めていきます。

手術が安全に行えるかどうかは、この段階での確認によって大きく変わります。ここからは、負担をできる限り抑えるために、検査や準備のポイントを順番に整理していきましょう。

着床位置と瘢痕部をエコーで確認する

帝王切開の経験がある人の場合、まず妊娠している位置をしっかり確認することが大切です。超音波(エコー)検査によって、受精卵が通常どおり子宮内膜に着床しているのか、それとも瘢痕部分に近い位置にあるのかを調べます。

瘢痕部妊娠(CSP)が疑われる場合、そのまま通常の中絶手術を進めると、子宮破裂や大量出血につながる危険があります。そのため、位置の確認は「中絶が可能かどうか」「どの方法が安全か」を判断するうえで欠かせないステップです。

また、瘢痕の厚みや菲薄化の有無も、エコーである程度評価できます。瘢痕が薄い部分が見つかった場合、手術方法や麻酔の種類、入院の必要性などが調整されることがあります。

血液検査と麻酔チェックを受ける

中絶手術では、多くの場合麻酔を使用します。とくに帝王切開経験者は、過去の手術歴や出血リスクをふまえた麻酔管理が必要となるため、事前の血液検査と麻酔チェックが重要。

血液検査では、貧血の有無や血液の止まりやすさ(凝固機能)、感染の兆候などを確認します。これらの情報は、手術中の出血量の予測や、輸血の準備が必要かどうかを判断する材料になります。

麻酔チェックでは、持病の有無、以前の手術で麻酔トラブルがなかったか、アレルギー歴などを確認します。心臓や肺への負担を避けるため、持病の薬を飲んでいる場合は、必ず医師に伝えてください。

飲食制限と子宮口の前処置を行う

中絶手術の前には、吐き気や誤嚥を防ぐために飲食制限が指示されることがあります。麻酔中に胃の内容物が逆流すると、肺に入ってしまう危険があるため、指示された時間以降の飲食を控えることが大切。

また、妊娠週数によっては、手術前に子宮口を少しずつ広げるための前処置が行われます。専用の棒状の器具や薬剤を使って子宮口を開きやすくしておくことで、手術中の無理な操作を減らし、瘢痕部への負担を軽くできます。

前処置のあいだに軽い痛みや張りを感じることがありますが、強い痛みや出血が続く場合は遠慮せずに医療スタッフへ伝えてください。指示された飲食制限と前処置を守ることは、安全に手術を進めるための大事な準備です。

緊急対応できる医療機関を選ぶ

帝王切開の経験がある人の中絶では、万が一の出血や子宮損傷に備えた体制が重要です。すべての医療機関が同じ設備を持っているわけではないため、事前にどこまで対応できるのかを確認しておく必要があります。

大きな出血が起こった場合に備え、輸血の準備ができるかどうか、必要に応じて開腹手術に切り替えられるかどうかは重要なポイントです。これらに対応できるのは、多くの場合、設備の整った病院や高度医療機関となります。

予約や相談の段階で、帝王切開歴があること、手術回数、これまでに合併症がなかったかを正確に伝えてください。自分の状態に合った医療機関を選ぶことで、手術中・術後のリスクを減らし、安心して治療を受けやすくなります。

中絶後の身体の変化と回復ポイント

中絶手術のあと、子宮の内部では傷ついた組織が修復を進めています。外見では落ち着いているように見えても、内部の粘膜は刺激に弱い状態が続くことがあり、回復には一定の時間が必要です。

どの程度の期間で体調が安定するかは個人差が大きく、回復のスピードだけで安全なタイミングを判断するのは難しいことも。そのため、術後の変化を理解し、生活を戻す順序を慎重に決めることが大切です。

ここからは、術後に起こりやすい変化と、安全に回復していくためのポイントを順番に見ていきましょう。

術後は1〜2週間の出血と痛みが続く

術後の子宮は内膜が修復途中のため、1〜2週間ほど出血が続くことがあります。特に、瘢痕部分の回復が遅れている場合は、出血量が増えたり、下腹部の張りや鈍い痛みが続くケースも。

出血が急に増える、血の塊が何度も出るといった変化があれば、無理をせず医療機関へ相談してください。

痛みは、子宮が元の大きさに戻ろうと収縮しているサインでもあります。市販の鎮痛薬が使えるかどうかは手術内容によって異なるため、術後説明で指示された薬を優先的に利用することをおすすめします。

入浴・運動・性交渉は一定期間避ける必要がある

術後しばらくは、膣から子宮内に細菌が入り込みやすい状態が続きます。そのため、湯船やサウナ、プールといった水が体内に入りやすい環境は、1〜2週間ほど避けることが多く、医療機関によってはさらに長い期間の制限が案内される場合もあります。

以下は、各行動と妊娠周期ごとの避けるべき期間です。

◆ 入浴(湯船・サウナ・プール)

「初期中絶(〜11週)」

  • シャワー:当日または翌日から可
  • 湯船:1週間〜10日後が目安
  • サウナ・岩盤浴:1〜2週間後
  • プール:1〜2週間後

「中期中絶(12〜21週)」

  • シャワー:翌日〜数日後(医療機関判断)
  • 湯船:2週間前後
  • サウナ:2〜3週間後
  • プール:2〜3週間後

◆ 運動(軽い運動〜負荷の大きい運動)

「初期中絶」

  • 散歩・軽いストレッチ:数日〜1週間後
  • 軽い筋トレ:1〜2週間後
  • 強度の高い運動(ランニング・筋トレ・スタジオ系):2週間後〜
  • 重い荷物(10kg以上)を持つ動作:2週間後〜

「中期中絶」

  • 散歩:1週間後くらいから
  • 軽い運動:2週間後〜
  • 中〜高強度の運動:3〜4週間後
  • 重い荷物:3〜4週間後

◆ 性交渉(膣性交)

「初期中絶」

性交渉:出血が完全に止まってから(通常1〜2週間後)

医師の術後検診で「問題なし」と判断されたあとが原則

「中期中絶」

性交渉:2〜3週間以降

※出血が続くことがあるため、“検診での確認後”が必須

大量出血や発熱があれば早急な受診が必要

出血が極端に増える、鮮血が流れるように出る、38度前後の発熱や悪寒があるときは、子宮内に炎症や感染が起きている可能性があります。悪臭のあるおりもの、強い下腹部痛、ふらつきや動悸がある場合も、受診のタイミングを遅らせないことが大切。

帝王切開の瘢痕が影響している場合、炎症が広がる速度が速まることがあり、放置すると治療が長引くことがあります。症状が軽くても迷ったときは医療機関や相談窓口に連絡し、判断を仰いでください。

生理は4〜6週間で再開しホルモンが安定する

中絶後は、早い人では4週間ほどで生理が戻り、6週間前後でホルモンの働きが安定していくことがあります。ただし、排卵は生理の前に起こるため、生理が来ていなくても妊娠につながる可能性はあります。妊娠を避けたい場合は、医師と相談したうえで避妊を再開してください。

生理の周期がしばらく乱れることがありますが、経血が極端に多い、強い痛みが続く、色やにおいに異常があると感じたときは、診察を受けるほうが安心です。帝王切開経験がある人では、瘢痕部の影響で回復に時間がかかることもあります。

帝王切開経験者の中絶後の妊娠と出産リスク

帝王切開を経験した人の場合、子宮には手術による瘢痕が残り、回復の状況によって妊娠中のトラブルが起こりやすくなります。

ここでは、再妊娠のタイミングと子宮回復の関係、瘢痕部着床に伴うリスク、そして次の妊娠・出産に求められる医療管理のポイントを整理していきます。

次の妊娠では医療管理の必要性が高くなることがあるため、帝王切開歴のある人は妊娠を希望する前に、医師と相談しながら計画を立てることが大切です。

再妊娠は子宮回復を待つことで安全性が上がる

帝王切開の手術によってできた瘢痕が十分に回復しないうちに妊娠すると、子宮壁が強く圧迫され、破裂や出血につながる危険が高まることがあります。

中絶を行った場合も同様に、子宮内膜が修復するまでに時間を要することがあるので、短期間で妊娠すると胎嚢が安定せず流産の可能性が高くなります。

一般的には、子宮を守るために6ヶ月以上間隔をあけて再妊娠を検討することが推奨されますが、瘢痕の厚みや菲薄化の有無、体力の回復状況には個人差があります。医師によるエコー検査や問診を受け、子宮が妊娠に耐えられる状態に戻っているか確認しておくと安心です。

瘢痕部への再着床は癒着胎盤のリスクが高い

帝王切開の傷跡へ受精卵が再び着床してしまう状態を「瘢痕部着床」と呼びます。この場所に妊娠が進むと、胎盤が子宮壁に深く入り込む「癒着胎盤」につながることがあり、出産時に出血が増える要因となります。癒着の程度によっては、胎盤剥離が難しく、子宮の温存が困難になるケースもあります。

瘢痕部着床は、通常の着床位置と異なるため、早期に気づくことがとても重要です。妊娠がわかった段階で、帝王切開歴があることを医師に伝えることで、着床位置を慎重に確認し、必要であれば専門的な医療機関へ紹介されることもあります。

過去の手術による癒着が強いと診断されたことがある人は、妊娠前の段階で相談しておくと安全性を高められます。

帝王切開歴がある女性は、次回妊娠で前置胎盤・癒着胎盤のリスクが上昇することが国際ガイドラインで示されています。

出典:Royal College of Obstetricians and Gynaecologists(RCOG)

次回の妊娠・出産は医療管理が必要

帝王切開を経験した人が中絶後に妊娠する場合、次回の妊娠と出産の管理は慎重に進める必要があります。瘢痕の状態によっては、妊娠後期に子宮が薄くなり、張りや痛みが出やすくなることもあります。

また、前回の手術による癒着、胎盤位置の異常、貧血の進行など、出産に影響する要素が複数重なることがあるため、対応できる医療環境が整っていることが重要です。分娩方法も、経膣分娩が選べる場合と、再度帝王切開が必要となる場合があり、医師と相談しながら進めることになるでしょう。

妊娠を希望する前に一度相談し、子宮の状態を確認しておくことで、安心して次に進みやすくなります。

帝王切開経験者の中絶に関するよくある質問

帝王切開を経験した人が中絶を考えると、まず「体が手術に耐えられるのか」という不安が生まれやすくなります。そこから、傷への負担、手術時の痛み、特殊な妊娠の可能性、次の妊娠を考えた避妊方法など、心配が次々と広がってしまうことがあります。

こうした疑問は、帝王切開の回数や瘢痕の治り方によって答えが変わる場合があり、一つの情報だけで判断するのが難しい場面も少なくありません。ここでは、特に相談が多い不安を取り上げ、医療機関で確認するときに役立つ視点をまとめます。

帝王切開は何回までなら中絶できる?

帝王切開の回数によって中絶が必ず受けられなくなるわけではありません。

ただし、何回まで可能かという基準は一概に決められず、回数よりも 瘢痕の状態、妊娠週数、受ける医療機関の体制などが判断材料になります。帝王切開の回数が多い場合は、より早い段階で医師へ相談することで、手術方法の選択肢が広がる場合があります。

帝王切開を2回以上経験している人や、過去の妊娠・手術で癒着を指摘されたことがある人は、受診時にこれまでの手術記録を伝えておくと、安全性の確認が進めやすくなります。

帝王切開経験者は中絶の痛みが強くなる?

帝王切開を受けた経験があるからといって、中絶の痛みが必ず強くなるわけではありません。ただし、帝王切開後に子宮や周囲の組織が癒着している場合、処置の負荷を感じやすく、痛みが強まる可能性があります。

痛みへの不安が大きい場合は、事前に麻酔の方法や鎮痛薬について相談することで、身体的・精神的負担を軽くできる場合があります。過去の手術で強い痛みを感じた経験がある人や、麻酔が効きにくかった人は、受診時に必ず医師へ伝えてください。

瘢痕妊娠(CSP)の場合はどう治療する?

瘢痕部妊娠(CSP)は、帝王切開の瘢痕部分に着床する特殊な妊娠で、子宮が裂ける危険が高い状態です。診断が遅れると大量出血につながり、子宮の温存が難しくなる場合もあるため、医療機関では早期の対応が重視されます。

治療には、薬剤による妊娠組織の縮小、カテーテルを用いた血流遮断、子宮内から妊娠組織を慎重に取り除く方法など、状況に応じて複数の選択肢があります。どの治療が適しているかは、胎嚢の位置や血管の流れ、瘢痕の状態によって変わるため、専門的な判断が欠かせません。

避妊はいつから再開していい?

中絶後は排卵が早く戻ることがあり、生理が再開する前でも妊娠する可能性があります。そのため、避妊をいつ再開するかは、体の回復と感染リスクの両方を考えながら判断する必要があります。

一般的には、性交渉の再開と同じく、医師の診察で子宮の回復が確認されたあとに避妊を検討する流れとなります。方法としては、コンドーム、低用量ピル、子宮内避妊具(ミレーナ)などがあり、帝王切開経験者の場合は、次の妊娠への影響も見据えて選ぶことが役立ちます。

「どの避妊法が安全か」は年齢や既往歴、今後の妊娠希望によって異なるため、再開時期とあわせて医師に相談してください。

まとめ:帝王切開経験者は早期の受診とリスクの確認を

帝王切開の経験がある中絶では、瘢痕の状態、妊娠週数、癒着や瘢痕部妊娠の可能性など、注意すべき点はいくつかあります。情報をひとりで集めて判断しようとすると、不安が強くなり、適切な時期を逃すおそれもあるでしょう。

安全に手術を進めるためには、気になる症状が軽い場合でも早めに受診し、自分の子宮の状態を医療機関で確かめることが大切です。次の妊娠を望む場合にも、術後の避妊や子宮の回復について相談することで、将来の選択肢を守りやすくなります。

監修医情報

理事長・院長

佐久間 航 医師

佐久間 航
略歴
平成12年 大阪医科大学医学部 卒業
平成18年 医療法人 大生會 さくま診療所 開院
所属・資格
  • 医学博士
  • 産婦人科専門医
  • 母体保護法指定医
  • 日本東洋医学会 漢方専門医
所属学会
  • 日本更年期学会 会員
  • 日本心身医学会 会員
  • 日本周産期新生児学会 会員